Lecture

テレビからネットにシフトするスポーツ中継:研究ノート

2023年7月8日に、情報通信学会コンテンツビジネス研究会による表題に関する公開研究会が、早稲田大学キャンパス19号館にて開催された。
その学会に私がゲストスピーカーに招待されたときの発表をもとに、東京経済大学の田村和人教授と、メディア開発綜研の浅利光昭氏と共に、研究ノートとしてまとめたものが、東京経済大学コミュニケーション学会巻号にて発行された。

地上波を中心に無料放送されてきた、スポーツ中継が、特に最近では有料の配信放送へとシフトする兆しがある。
高騰する放送権を背景に、地上波放送の営業収支スキームでは放送が成立しないケースが多発している。
サッカーの、2022年カタールワールドカップ最終予選での対オーストラリア戦、勝てば出場が決まる大一番で、地上波放送は無く、有料のDAZNの配信放送だけだった。アジアサッカー連盟(AFC)との一括契約で、最終予選のアウェーゲームはすべてDAZNが獲得していた。日本サッカー協会の田嶋会長は、国民的な関心のある試合は、ユニバーサルアクセス権という概念で、地上波放送があるべきと主張したが、時すでに遅く叶わなかった。
その後も放送権高騰の背景を受けて、地上波放送の成立が次第に難しくなっている。
田嶋会長がいうユニバーサルアクセス権とは何か?

一方、スポーツ中継における配信も全体として順風満帆ではない。キラーコンテンツを獲得しても、加入者の増進に必ずしも結びついていないからだ。
時代の趨勢を受けて、テレビ離れ、ネット配信の拡大へと進んでいるにも関わらず、ことスポーツ中継は必ずしもネット配信で定着してはいない。日本では、お金を払ってスポーツ中継を観るという土壌がなかったことも一因ではある。
果たしてスポーツ中継の未来はどうなっていくのか。


田村和人教授は、元日本テレビで、20年以上前からネット業界に精通している。
メディア綜研の浅利光昭氏は、ユニバーサルアクセスという概念に一つの意見を投げかける。
私はオリンピック放送に代表されるように、スポーツ中継の地上波無料放送は無くならないと思っている。
ただし、スポーツソフトの特性や現状における人気度によって、ネット有料放送とのすみわけや協業が進むのではないかと推察している。

上記のようなテーマに興味のある方は、ぜひご一読いただきたいと思う。

テレビからネットにシフトするスポーツ中継 : 研究ノート
Shift in Sports Broadcast Media from TV to the Internet
著者: 田村和人、福田泰久、浅利光昭
出典: コミュニケーション科学 = The Journal of Communication Studies
発行日: 2024年2月14日出版者: 東京経済大学コミュニケーション学会巻号: 059開始頁: 171終了頁: 
200URI: http://hdl.handle.net/11150/12038ISSN: 1340-587X出現コレクション059号

p171-200_コミュニケーション科学 第59号_CC2022_7(田村・福田・浅利先生).indd (tku.ac.jp)

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